まちなかキャンパスについて
ごあいさつ
まちなかキャンパス実行委員会 会長
旭川工業高等専門学校 教授 浜田 良樹
2019年、広い意味でのデザインで地域をより盛り上げようという機運が芽生え、有志により「あさひかわ創造都市推進協議会」が設立されました。同協議会は、国連教育科学文化機関(UNESCO)の「ユネスコ・クリエイティブシティーズネットワーク」(UCCN)加盟に向けて活動し、同年10月30日に旭川市の加盟が認められました。UCCNは創造的・文化的な産業によって活性化を目指す世界の都市が,連携・相互交流を行うことを促支援・促進するネットワークで、文化を通じて、持続可能な都市を創造するものです。UCCNが想定する文化とは音楽、映画など7つあり、旭川市は「デザイン」で認証されたことから、メディアでは「ユネスコデザイン創造都市」と呼ばれます。デザイン創造都市は世界に49都市しかありません。私たちはこの誇りと責務をまっとうすべく、真摯に取組むことが求められます。
「まちなかキャンパス」は「ユネスコデザイン創造都市」を推進し、前に進めていくための新しい仕組みです。「デザイン」「まちづくり」「SDGs」について学生・生徒が日頃探求していることを、公共空間で一斉に展示し、小・中学生とともに互学互修します。2021年にオンラインで初開催し、22年には買物公園で対面開催を果たし、6万3千人が、23年には6万8千人が参加しました。こういうものは日本の他都市には存在しておりません。22年12月、まちなかキャンパスが「グッドデザイン・ニューホープ賞」に「仕組みのデザイン」として入賞した事実は、この取組みの価値が全国的にも注目を集めていることを物語っています。
昨年は33団体が43基のテントを用いて55の展示を行い、出展者は大半が高校生、高専生、大学生でありその合計は581名です。加えて今年は学生委員会が活発に活動しており、30名近い大学生、高専生、高校生がイベントを運営しています。日常の学びから旭川の未来を創造する素晴らしい機会にぜひご参加ください。
概 要
目 的
未来において旭川でユネスコ創造都市としてSDGsを実践できる人材、デザインについて考えられる人材、自ら学ぼうとする意欲のある子どもを、すでにそういうことを学んでいる地域の先輩が学びながら育成すること。
概 要
旭川市は2019年10月にユネスコ創造都市ネットワークのデザイン分野で加盟認定を受けました。街を挙げてのデザインによるまちづくり、という観点から2015年からは旭川家具産地展を「あさひかわデザインウィーク(ADW)」に改名し、さらに、デザイン都市となったことをきっかけに、家具業界だけではなく地域全体のものづくり産業が参加するデザインイベントとして、毎年6月にさまざまな立場の個人や団体がイベントを開催しています。
まちなかキャンパスは、すべての高校生に履修が義務づけられている探求学習について、その成果を発表する場として、その知見を年下の子どもに向けて伝えることにより、お互いに学び合う場として、旭川高専の浜田とその仲間によって提唱され、ADW関連イベントとして2021年9月にオンラインで、22年6月に買物公園で対面リアル開催を果たし、今年で4回目の開催となります。日本のどこにもない、大学生、高専生、高校生、中学生、小学生すべてが参加する大規模な教育イベントです。
1.イベント名:
まちなかキャンパス2024
2.日 時:
6月22日(土)―23日(日)10時―16時
3.場 所:
旭川平和通買物公園(宮下通-7条緑道)
4.主催・共催・後援等
主催:まちなかキャンパス実行委員会
運営:まちなかキャンパス学生委員会
共催:旭川市、旭川ユネスコ協会
後援:旭川市教育委員会、あさひかわ創造都市推進協議会、旭川商工会議所、旭川平和通商店街振興組合、三和・緑道商店会、北海道中小企業家同友会道北あさひかわ支部、旭川信用金庫、旭川ウェルビーイング・コンソーシアム(AWBC)、旭川家具工業協同組合、旭川機械金属工業振興会、旭川情報産業事業協同組合、旭川クリエイターズクラブ、一般社団法人旭川青年会議所、旭川デザイン協議会、旭川工業高等専門学校産業技術振興会、株式会社日本政策金融公庫旭川支店、キャリアバンク株式会社、北海道新聞旭川支社、北海道イノベーティブ・デザイン経営研究協議会(HIDERA)
5.参加団体概要
公立高校:5校、私立高校:5校、高専:1校、大学:4校、その他:17団体/合計:32組織
展示件数:延べ55件
展示参加予定者数:延べ600名
見込み参加者数:延べ70,000名
リーフレット:34,000枚旭川市内すべての小中高生に配布
ポスター:250枚
沿 革
1.前史:家具のまち・デザインのまち
旭川の開拓は、1898年の鉄道開通、1901年の第七師団進駐により、本格的な都市作りからはじまりました。たくさんの建築物、家具などの需要に応えるに十分な森林資源があり、それを河川によって切り出してくることにより、旭川は木工の街として知られるようになりました。
やがて貿易自由化と円高が進行し、外国から木材が大量に輸入され、国産材を用いた家具は割高になり、その販売は長期にわたり低迷することになります。しかし、旭川家具は持ちこたえ、現代でも、日本5大家具産業集積地のひとつです。それを支えたのがデザインの研究でした。旭川家具工業協同組合が「旭川デザインセンター」を常設しているのはその典型的な見本と言えます。
デザインにおける進取の気性は、やがてその興味を家具デザインからデザイン全般へと拡大し、1997年には「旭川デザインビジョン」という刊行物を発刊しています。巻頭言には「さまざまな分野を調整し具体化するデザインの考え方を取り入れる」と明記し、具体的な対象として「自然との共生」「冬の暮らし」「誰もが暮らしやすいまち」「美しく活気のあるまち」の4つの方向性を掲げ、その実現のために「自然環境」「生活文化」「地域産業」へのデザインという考え方の導入について述べ、そのために必要な行政システム、市民参加のあり方、協議会の設立などを網羅的に記述しています。街の暮らしやすさを競い、有能な人材を招くということが全国で流行していた時代に、横浜市や名古屋市などでも同様の動きがありました。
JR旭川駅の高架化に伴う都心部の再開発プロジェクトである「北彩都」は都市計画の専門家から高い評価を受けています(日本都市計画学会・学会賞計画設計賞, 土木学会デザイン賞最優秀賞、都市景観大賞国土交通大臣賞)。「旭川家具産地展」は2015年に「あさひかわデザインウィーク」に名前を改めます。「国際家具デザインコンペティション旭川」などのイベントも熱心かつ活発に開催するようになりました。
近年では、ものづくりをデザインの観点から考え、2018年以降特許庁が掲げた「デザイン経営」はそれなりのブームを引き起こし、旭川市もChefi Design Producerを採用しました。
2.「ユネスコデザイン創造都市」
このような背景のもと、2019年、広い意味でのデザインで地域をより盛り上げようという地方創生の動きについて国際的な認証を得ようとの機運が芽生え、旭川市に「あさひかわ創造都市推進協議会」が設置されました。
あさひかわ創造都市推進協議会は設立後直ちに、国連教育科学文化機関(UNESCO)の「ユネスコクリエイティブシティーズネットワーク」(UCCN)という都市認証の取得を目標とし、所与の提案をすることにしました。文部科学省における書類審査を受け、日本国としての推薦を得て、2019年5月に提案書をユネスコに提出。他の加盟都市によるレビューを経て、今後デザインで存在感を発揮できると認められ、2019年10月30日に旭川市の加盟が認められました。
3.ユネスコ認定の価値
UCCNには文学、映画、音楽、クラフト&フォークアート、デザイン、メディアアート、食文化の7分野で350の加盟都市があり、デザイン分野には2024年4月現在で次の49都市があります(別添PDF)。
ベルリン、イスタンブール、ブタペスト、北京、上海、バンコク、シンガポール、ソウルなど各国の首都級の大都市がひしめいています。日本では名古屋と神戸に次ぐ3番目で、道内ではメディアアートで札幌が加盟認定されています。
旭川がこのようなネットワークの一員に認められたたと言うことは、旭川にはこのような著名都市に匹敵する力があると国際的に認められたことを意味します。UCCNは未来志向の枠組みで、デザインによるまち作りを行う都市相互の結びつきを強化し、ベストプラクティスを共有することを目的とし、同時に国連全体の目標であるSDGsも共有することになります。
すなわち旭川は、デザインという文化の力で街を豊かにし、持続可能な未来を拓くことを国際的に約束し、その模範となる責務を担うことになったわけです。
4.デザイン創造都市に向けて何をなすべきか?
ところで、デザインという言葉は誰でも知っていますが、その意味するところは何でしょう。デザインの力で街を拓くってどういうことでしょう。何よりも、それでは私たちは具体的に何をすればいいのでしょう。大人はいろいろなことを知っている。市場、コスト、自分の能力など、いろいろと考え込んでしまいます。デザインによる持続可能なまちづくりについて任せきりではなく、市民の主体的な活動が求められます。
これに対し、子どもは余計な先入観を持たず、無限の想像力を持っています。デザインとまちづくりとSDGsのような大人にとっては一見脈略のないような言葉も、それなりにつなげて理解する力を持っています。
そして、今時の高校生や大学生は、ずいぶんとSDGsを学んでおります。高校生なら誰でも知っている「探求」です。やらされ感は拭いきれません。大学入試にでません。野球のようにコンテストもありません。多くの場合、それを語る場は校内の発表会に限定されているのです。長期的なモチベーションの低下は避けられません。
5.「まちなかキャンパス」構想
ここで、街の真ん中にみんなが集まり、高校生、大学生のお兄さん、お姉さんが、わかりやすく自分たちの取り組みを紹介するという子どもはそれを吸収し、やがて問題意識を持った大人としてみんな成人していく、そんな機会があったらいいのでは?これが「まちなかキャンパス」構想の始まりです。
そんなことを願って、街全体をキャンパスにしてしまおう!と考えました。旭川市中心部には買物公園という歩行者天国があり、ここにみんなが集い、教え合い、学び合う(互学互修)の場として、幸せを象徴する黄色いフラッグを立て、まちなかキャンパスと名付け、2021年9月18日・19日に30のテントにおよそ300人の高校生たち、3000人の子どもたちが出会う予定でした。
6.コロナ禍によりオンライン開催へ
2021年の夏は猛暑でした。オリンピックをやる、やらないで国民の意見が分断されたまま、無観客で行われましたが、「公園飲み」などモラルが低下した夏でした。残念ながらコロナ禍はデルタ株の猛威により各地で医療崩壊が発生、過去最悪の状況にあり、まちなかキャンパスにもさまざまな懸念が寄せられるようになりました。
中止は簡単ですが、それでは何も生まれません。SDGsのゴールである2030年まであと9年しかありません。「まちなか」への物理的な植樹はできませんでしたが、それならせめて種をまこうと考え、場所をサイバースペースに移し、映像制作会社「イマージュ」のスタジオから、高校生等による子ども向けYoutubeライブ中継を行うことに決めました。
7.まちなかキャンパス2021
かくして「ADWの大半のイベントが中止となった今、まちなかキャンパスに注目」と「メディアあさひかわ」に書かれたのは9月号でした。15日発売で、その週末には浜田、定居はイマージュ社のスタジオに詰めていました。株式会社コンピュータ・ビジネスの西館さん、旭川ユネスコ協会会長の林朋子先生・・・・非常に多くの仲間と一緒でした。9月になってすぐ、夏休み明けの小中学生(5年生以上)にリーフレットを配布、14時間分のシナリオを書いて、ユネスコデザイン創造都市の13都市に動画提供を呼び掛けるなど、やれるだけのことはやりました。
スタジオを借り、スタッフに来て頂く、アナウンサーも必要だ。そういうことで経費を集めるため、株式会社うぶごえの全面協力に基づきクラウドファンディングにも挑戦しました。
Youtube中継(初日・2日目)は終わった後も数字が増え、最終的に3000アクセスほどになりましたが、さて、誰が見てくれたのか。インターネット上には非常に多くの人がいますが、真面目なコンテンツばかりだし、ものすごく長いし、Youtuberとしては初めてだから冷やかそうにもスキがない。荒らしとかネガティブコメントはほとんどなかったです。一方で、各学校の先生方、子育て中の教職員などから見ました、あれがおもしろかったです、そういう証言が多数寄せられたので、どうやら旭川の子どもたちに伝わったらしいという確信を得た次第です。
8.まちなかキャンパス2022
その後デルタ株は収束し、北海道にも観光客が帰ってきました。そんな頃でどうにかなるかな、来年は対面だと考えて旭川平和通商店街振興組合を訪ね、6月18・19の土日に1条から7条まで(延長1km)を全部貸してくれと申し入れ、快諾を得ました。しかもそれだけでは飽き足らずアッシュアトリウム、ICTパーク、まちなか交流館、北海道中小企業家同友会道北あさひかわ支部 など屋内会場も次々に予約。それと並行して市内の高校13校を全部回り、出展を呼びかけました。日頃の探求学習の成果をまちなかキャンパスで存分に発表しよう!という提案は好意的に受け止められ、最終的に9校1高専4大学10団体の541名がテント25基、屋内展示11を実施する計画が出来上がりました。子どもたちにはスタンプラリーを実施、お兄さん、お姉さんのところでお勉強や体験をしたら、景品がもらえる仕組みを作りました。リコージャパン株式会社とコンピュータ・ビジネス株式会社によるデジタルサイネージの提案を受けたのもこの頃です。
一方で、オミクロン株は過去最多のペースで猛威を振るい、旭川市内でも学級閉鎖が相次ぎました。しかし、計画を立てたからにはやり抜こうと考え、飲食禁止、音楽演奏禁止、テントの横幕なし(換気のため)などのルールを作りました。旭川信用金庫が同時開催した「まちなか賑わいSTREET」との相乗効果も期待しました。
リーフレットは27000部を印刷、旭川市内のすべての小中学生に配布し、当日来た人にはスタンプシートと共にもう1回配りました。そして迎えた当日、まずまずの晴天に恵まれ、子どもたちは保護者を放り出してスタンプラリーに熱中し、テナントには当初の予定をはるかに超えた数のお客さんが押し掛けることになりました。景品を獲得したのは550名、うち小学生は304名でした。しかし実際にはスタンプラリーと無関係な親子がたくさん来ていました。旭川市が数取り器でサンプリング調査を行い、エリア数と時間を乗じて計算した結果総来場者数63,000人と判定されました。親イベントの旭川デザインウィークの参加者数の8割、創業2年目、ストリートで初開催でありながらこの数字は驚異的です。
なお2022年の事業では、旭川青年会議所「ナナカマド基金」のご支援300,000円を受領し、その成果物をYoutubeにて公表しています。
9.まちなかキャンパス2023
この話はちょっとした話題になりました。動員数もすごいが、似たコンセプトの催しが見つからないということを理由とします。
ユネスコデザイン創造都市の国際会議が対面で再開し、10月にリトアニアのカウナスで、23年3月にオーストラリアのジーロンで、旭川でやったことを少し説明したのですが、ほぼすべての人から初めて聞く話だと言われました。どうも、世界中どこにもないようなのです。当日までの準備と運営に奔走した旭川工業高等専門学校の4年生(大学1年生相当)6名が公益財団法人日本デザイン振興会が初めて開催した「グッドデザイン・ニューホープ賞」に「仕組みのデザイン」というカテゴリで入賞いたしました。
この学生たちが中心となり23年度には学生委員会が発足、旭川高専、市立大学、教育大学、旭川北高校、旭川明成高校の学生からなり、2023年のまちなかキャンパスの企画に参与しました。また事業においては公益財団法人太陽財団の助成金を頂いております。飲食禁止、音楽演奏禁止は「静かでいいお祭り」を維持するために堅持しました。旭川信用金庫が同時開催した「まちなか賑わいSTREET」も姉妹イベントとして昨年と同様に共存しています。
リーフレットは36,000部を印刷、旭川市内のすべての小中学生と高校生に配布し、当日は晴天に恵まれ、子どもたちがスタンプラリーに駆け回りました。8校1高専7大学13団体の581名がテント43基、屋内展示7,イベント数55を出展し、参加者数は68,000名でした。